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2025ねん ねんとうしぼくしょかん ふりがなつき:Microsoft Word / pdf
2025年 年頭司牧書簡
「シノドスを踏まえた新たな一歩」
新潟司教 パウロ 成井大介
新潟教区の皆様に、主の御降誕と新しい年のお喜びを申し上げます。年の初め、特に戦後80年を迎える年にあたり、ともに平和を紡いでいくことができるよう、神の母聖マリアの取り次ぎによってお祈りいたします。
昨年をふり返って
昨年、新潟教区では宣教司牧方針が出され、交わり、宣教、参加を三本柱とし、宣教司牧に取り組むことを教区全体で始めました。昨年の年頭書簡でお知らせしたとおり、各共同体で方針について分かち合い、それぞれに合った活動計画を立て、取り組んでいただけたらと思います。3年間の取り組みの後、2027年を評価の年としたいと考えています。
昨年は、新潟県内の3地区が再編された年でもありました。この機会に、地区運営のあり方についても宣教司牧方針に沿ったものにすべく意見交換を進め、今年の春に新たな体制に移行できるよう調整を進めています。これについてはまた改めてお知らせいたします。
世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会
様々な出来事があった2024年でしたが、カトリック教会にとって最も重要な出来事の一つが、2021年から行われてきたシノドス第16回総会の全行程が無事に終了し、最終文書が出されたことではないでしょうか。
現代社会にあって教会がともに歩むということについて、3年間かけて、全世界の小教区、教区、司教団、大陸ごとの司教団連盟、そして、世界からの代表者による、バチカンにおけるシノドス総会において、識別(神のみ旨を祈りと対話のうちに探ること)が行われてきました。教会は、「“霊”が諸教会に告げること」(黙示録2章7節)を新潟教区を含む世界中の人々の声から聞き取るべく、耳を澄ませてきたのです。第2会期最終文書(以下、「文書」)を読んでいて、多くの点について、新潟教区の現状そのものだと感じました。都市部に人口が集中し、地方で信徒が減少する中での司牧体制の変化、外国籍信徒の増加など、世界の多くの国で似たような状況があると理解することもできるでしょうし、新潟教区の共同体から上がった声が、世界の多くの似た状況を抱える地域の声とともに取り上げられたと理解することもできるでしょう。
バチカンでシノドス総会に参加された菊地枢機卿様は、会期中のインタビューの中で度々、今回のシノドスでは「シノドス的な教会の土台を作っている」のだと話されています。シノドス会期が終わっても、その土台の上にともに歩む教会を造っていく作業はずっと継続していきます。
この書簡で引用している「文書」の翻訳は、成井の試訳です。本当は「文書」の日本語公式訳が出てからこのような書簡を書くべきだと思います。しかし、2024年10月末に閉会したシノドスを受けて新しい年を始めるにあたり、ぜひこれからの教会のひとつの土台となるシノドスの実りについて少しでも早く、またたとえ一部でも皆様と分かち合い、世界の教会と歩みをともにして今年の活動を進めていけたらと願い、この書簡を書いています。「文書」にはわたしたちの宣教司牧方針を深めるためのヒントがたくさんちりばめられています。公式訳が出たらぜひ皆様に読んでいただき、共同体で分かち合っていただきたいと思います。
霊的、構造的な刷新
「文書」はシノダリティ―ともに歩むこと―の意味について次のように教えます。
「シノダリティとは、キリスト者がキリストとともに、神の国に向かって、全人類とともに歩むことです。宣教を目指すシノダリティにあっては、教会のあらゆる立場の人々が集まり、互いに傾聴、対話、共同体としての識別を行います。……率直に言えば、シノダリティとは、教会がキリストの光を放つすべての人とともに歩むために、より参加的で宣教的であることを可能にする、霊的な刷新と構造改革の道です。」(28項)
単なる組織的な改革なのではなく、霊的な刷新であることが重要です。「文書」は「この(交わりの)神秘は、聖体祭儀、すなわち、三位一体の神との一致と、聖霊を通してキリストにおいて実現される人間同士の一致において、その起源と頂点を持つ。」(31項)として、ともに歩む交わりの共同体の霊的な側面を強調しています。
宣教のために
シノダリティの目的について、「文書」は次のように述べます。
「シノダリティはそれ自体が目的なのではありません。 むしろ、キリストが聖霊によって教会に託された使命に奉仕するものです。」(32項)
この使命とは、宣教です。つまり、わたしたちがともに歩むのは、教会の内部がよりよく組織されるためというよりは、「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい」マルコ16.15)というイエスの言葉に従って宣教するためなのです。
「宣教は、洗礼を受けたすべての人々の役割です。女性と男性信徒の第一の務めは、福音の精神を世界の現実の中に浸透させ、世界を変化させることです」(66項)。信者一人ひとりが、家庭、学校、職場、施設など、それぞれの場で福音の精神を生きることを通してこそ、宣教することができるのです。司祭や修道者ができる宣教は、その一部です。
共同識別と共同責任
「文書」は、2021年に始められた今回のシノドスの実りをすでに目にすることができるとし、次の4点を挙げました。霊における会話、共同識別、召命の賜物の分かち合い、宣教における共同責任(7項)。そして、教会の様々なレベルの共同体において、協議と識別というシノドス的な方法論をもって日々の歩みを続けるよう呼びかけています(9項)。そのために、新潟教区においても『シノドスハンドブック』で紹介されている「霊における会話」を使って分かち合いを行い、共同識別を進めていただけたらと思います。
『シノドスハンドブック』:https://www.cbcj.catholic.jp/2024/08/06/30457/
新潟教区宣教司牧方針の三つの柱の解説にもありますが、信徒、修道者、司祭、司教、女性も男性も、地元の人も海外出身の人も、皆でともに識別し、皆でともに責任を担って歩んでいくために、互いに耳を傾け、互いに学び合い、変えられ合い、宣教司牧に取り組んでいきたいと思います。
共同責任について、「文書」はすべての信者が協力し、責任を負う重要性について述べた上で、次のように記しています。
「シノドスで経験したことは、司教、司祭、助祭が、神の民の他のメンバーとの協働を含む、司牧の実践における共同責任を再発見する手助けとなりました。……任務と責任をより広く分け合い、何が叙階された司牧者にふさわしく、何が他者に委ねられ、また委ねられなければならないかについて、より勇気をもって識別することによって、それぞれの活動がより霊的に健全で、司牧的にダイナミックな方法で行使されることが可能になるのです。」(74項)
新潟教区において、2000年に7500人いた信者は、2023年で6600人に減りました。司祭は36人から30人に、シスターは100人から48人になりました。減っていないのは教会の数で、2000年から現在に至るまで、巡回教会や集会所をあわせて37教会です。必然的に、各教会は少ない人数で活動することになり、司祭は主日のミサのために複数の教会を回ることになっています。こうした中、教会共同体における司祭と信徒の役割分担が進められてきていますが、司祭が少ないから仕方なく役割を分担するのではなく、司祭も信徒も、高齢者も若者も、日本人も海外出身者も、誰もお客さんではなく、すべての人にとって「わたしたちの教会」であり、「ともに宣教する教会」であるために、適切に役割分担を進めていけたらと願っています。
地域の変化
一つだけ、社会の変化に関連することがらについて触れておきたいと思います。教会は、教区や小教区といった地域ごとに共同体を形成し、活動をしてきましたが、現代社会においては人が頻繁に移動し、小教区、地区どころか、教区を越えて教会活動に参加し、さらにインターネットを通じて地域に関係なく交わりを深めています。「文書」は、こうした状況にあって、「このような社会的、文化的な発展は、教会生活における『地域』の意味を考え直し、教会がその使命によりよく奉仕できるよう、組織のあり方を見直すことを求めています。『場所』には、地理的・文化的な側面があることも否定しませんが、それをむしろ人間性を経験する現実的で具体的な環境として理解することが重要です。」(114項)とし、教会を人と人とが出会い、交わり、ともに歩む環境を提供する場として位置づけ、活動に取り組むよう促しています。
昨年11月にお知らせしたとおり、今年、カトリック教会は聖年を祝います。今回の聖年のテーマは「希望の巡礼者」。わたしたち新潟教区がともに歩む宣教の道を、主への希望のうちに続けていくことができるよう、また、わたしたちの存在と活動が、主が与えてくださる救いの希望を人々に広めるものとなるよう、この一年の取り組みを進めて参りましょう。皆様の上に神の豊かな祝福と導きがありますように。