2022年 年頭司牧書簡

2022年 年頭司牧書簡

 

ともに歩むために

 

新潟司教 パウロ 成井大介

 

主の御降誕と新年のお慶びを申し上げます。今年の皆様の歩みの上に、主の豊かな恵みと導きがありますように。また、共同体として、愛に根ざして歩むことができますように、お祈りいたします。

 

昨年を振り返って

2020年の春に始まったコロナ禍は瞬く間に世界中に広がり、この一年ほどは世界での一日あたりの新規感染者数が50万人を境に上下するという状況が続いています。わたしたちは、「今日は新規感染者○名、死者○名でした」という言葉をこの2年近くの間、毎日聞かされてきました。「数の多さではない。一人ひとりの人生、命のことなのだ」と毎日自分に言い聞かせなければ、感覚がおかしくなってしまいます。

新型コロナウイルス感染症には誰でも感染する可能性がありますが、コロナ禍にある社会のひずみで特に影響を受けたのは、普段から社会的に弱い立場に置かれた人びとでした。多くの非正規労働者が職を失いました。その中で特に女性の割合が大きく、職についている女性の2020年の自殺者数は3割近く増加しました。子どもの自殺は3割強増加しました。一人親世帯の親子の受けた影響は非常に深刻でした。また、多くの外国人労働者も職や住み家を失い、さらに帰国便がないという八方塞がりの状況に直面しました。

そのような中、自粛生活の継続により、人と会ったり、話したりする機会が減り、周りの状況が見えにくい状況が続いています。教皇フランシスコは私たちに「無関心のエゴイズムというウイルス」に侵されないようにと呼びかけています。キリスト者は、今のような困難な時にこそ、何らかの形で人と繋がり、助け合い、ともに生きていくよう招かれているのです。 

さて、私は着任してからの1年と3ヶ月で、新潟教区の37の教会と7の修道院(現在は6)のうち、32の教会とすべての修道院を訪問いたしました。しかし、やはりコロナ禍によって、何度も計画が変更になり、特に秋田県内の教会への訪問が中々できずにいることを申し訳なく思っています。教会共同体の皆様には、コロナ禍対策のために大変ご不便をおかけしております。対策の取り組みは、単に教会の中での感染拡大を避けるというよりは、自分と、共同体と、地域を守るための行動です。皆様のご協力に心から感謝申し上げます。教会を訪問した際の懇談では、教会によってはミサ中声に出して祈れない、歌えない、また聖書を読む会や茶話会などを中断しているなどの声が聞かれました。また、ご高齢の方の中には、コロナ禍が始まってから一度もミサに来ることができない方がおられたり、技能実習生や医療・介護職の方々の中には教会に来ることが禁止されている方もおられると聞いています。

こうした状況にあって、創造的な取り組みも生まれてきています。長岡地区の地区大会は、各教会をオンラインで繋いで行われました。教区青年の集いは30名ほどがそれぞれオンラインで繋がり、しかもベトナム語と英語の通訳が行われました。小教区では教会報を利用した分かち合いも行われています。フードバンクへの寄付を行うといった活動も行われています。皆様の教会ではどのように活動を進めていますか?これからもしばらくはコロナ禍に関連する何らかの制限が続いていくと思われますので、各教会で柔軟に対応していただけたらと思います。また、無関心ではなく、何か自分に出来ることをしようという心で、困難を抱える人びとに関わっていきましょう。

 

ともに歩むために

昨年10月に世界中の教区で始められたシノドスの歩みのテーマは「ともに歩む教会のため—交わり、参加、そして宣教」です(ギリシャ語のシノドスという言葉の元々の意味は、「ともに歩む」です)。この取り組みが新潟教区にとって、より「ともに」歩む共同体、つまりシノドス的な教会共同体として成長していくための機会になるよう期待しています。

昨年の4月の終わりに新潟教区では宣教司牧評議会が発足しました。この評議会は、信徒、修道者、司祭の、一致、協力、交流をはかり、教区全体の宣教司牧を推進するための様々な事柄について司教の諮問を受けて検討します。メンバーは、各地区から年齢、性別、出身国などの違いが豊かに表されるように選ばれており、その意味でまさに宣教司牧評議会はシノドス的な集まりだと言うことができるでしょう。

この評議会の第一回会議で話されたのが、2012年の新潟教区の優先課題の見直しと、変化した教会と社会の状況に対応する宣教司牧方針の作成をどのように進めていくかということでした。そしてこの会議のすぐ後に教皇フランシスコはシノドスの開催を発表したのです。教区の優先課題のふり返りと宣教司牧方針の作成を行うタイミングで、「ともに歩む」ことを深めるシノドスが始まったのは、わたしたち新潟教区共同体にとって実に有り難い恵みではないでしょうか。

 

分かち合いの年

昨年11月に各小教区、修道院にお送りした「シノドスと教区の優先課題の振り返りについて」の中に書きましたが、私たちは2年弱の時間をかけて教区の宣教司牧方針を作成していきます。小教区と修道院共同体の皆様には、2回のステップに分けて分かち合いをしていただき、その結果が2023年の夏頃に発表される予定の宣教司牧方針に反映されていきます。この、方針を作っていくプロセスそのものが、教区としての「シノドス的」な歩みであると私は感じています。

小教区と修道院における2回の分かち合いは、昨年の11月から1年間かけて行われます。つまり、今年は新潟教区にとって、これまでの共同体のあり方や優先課題への取り組みについて振り返り、教会と社会の現状を把握し、今後どのような宣教司牧にどのような体制で取り組んでいくのかをしっかりと考える一年となります。

 

聖霊に導かれて

この歩みを進めるためには、何よりもまず聖霊の導きに信頼することが必要です。私たちが作る共同体は神のみ旨を生きる共同体であり、私たちが取り組む宣教司牧は神のみ旨を行う活動なのです。そうであるためには、イエスの復活の後、弟子たちが聖霊に強められ、導かれて広場へ出て行き福音を伝えたように、また福音を聞いた異邦人にも聖霊が降り、共同体が大きくなり、これまでユダヤ人として守ってきた律法を異邦人に押しつけないことを決めたように、聖霊に導かれて歩みを進め、新しい状況の中でより相応しく福音を生き、伝えることができるように変化していくことが必要です。

教皇フランシスコは「時は空間に勝る」という原則について度々言及しています。『福音の喜び』222項からの箇所で教皇は、場当たり的な対応や、すぐに結果が見える行いではなく、長期的な取り組みの重要性について、この原則を用いて教えています。将来へと続く時の流れの中に自分を置くことにより、困難な状況に耐える忍耐、計画を変更する柔軟性、出会う人びとと協力する姿勢などを持つことが出来るようになります。今年私たちが話し合いを進めるにあたり、このように長い時の流れの中に自分たちを位置づけることが必要でしょう。福音をともに生き、伝えていくという、2000年の間絶え間なく続けられてきた営みを、私たちが今の社会の中で、将来に向けて、秋田、山形、新潟の地でどのように行っていくことができるのでしょうか?絶対に確かなことは、私たちのどんなにささやかな行いも、短い祈りも、間違いなく神の国の完成に向けた大切な一歩だということです。私たちの信仰の先輩の祈りと行いがあって私たちがいるように、私たちの祈りと行いを神が自由に用いてくださり、将来の世代に実を結ぶのです。

アフリカの格言に、「早く行きたい者は一人で歩け。遠くまで行きたい者は他の人とともに歩け。」というものがあります。長く、遠い道のりを行く私たちは、聖霊の導きに信頼して共同体としてともに歩んで参りましょう。

今年は岡秀太助祭の司祭叙階が予定されています。これまで養成プログラムに真摯に取り組んできた岡助祭に敬意を表したいと思います。そして、祈り、支援してくださった皆様に感謝いたします。これからも岡助祭を通して、神の愛が多くの人に伝えられますように。皆様、引き続きお祈りくださるようお願いいたします。

教会は、一年の初めの日に神の母聖マリアを記念し、また世界平和の日を祝います。困難にあっても愛のうちに周りの人を大切にし、平和な年にしていくことが出来ますよう、聖母マリアの取り次ぎによって祈りましょう。

 

2022年1月1日



印刷用A4版(PDF)

印刷用A3版(PDF)